第198話隠れた才能

そのとき、騒ぎを耳にしたゾーイが、近くの事務室から姿を現した。視線はまっすぐ、グレースの傍らに立つアンナへ落ちる。アンナの顔を見た途端、ゾーイは眉をひそめた。どこかで会ったことがあるような、妙な既視感が胸をくすぐったのだ。

だが、どこで見たのかがどうしても思い出せない。ゾーイは気配を悟られぬよう扉の陰に身を隠し、廊下で繰り広げられるやり取りを黙って見守った。

グレースが信じようとしないのを見て、アンナの我慢も限界に近づいていた。

「トーマスさん。あなたが専門家の手を求めたから、私は来たの」アンナは淡々と言った。「どいてくれないなら、助けなかったって責めないで」

グレースは疑うようにアン...

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